公認不正検査士の仕事とは
公認不正検査士は、組織内部の不正を発見し、抑止と再発防止に努める捜査のエキスパートです。
公認不正検査士は、不正の手段だけでなく、動機や正当化といった心理的側面にも着目し、内部統制だけでは防ぎきれないリスクを低減させます。そして、もし不正が発生した場合にも、迅速に調査を行ない企業価値の維持に力を尽くします。まだ日本では馴染みがない資格かもしれませんが、アメリカには約2万6千人の公認不正検査士がいると言われています。
公認不正検査士の仕事は脱税や粉飾決算、横領や情報漏えいなど、主として企業内部で起きる不正を暴き、コンプライアンスの維持に貢献することです。こうした仕事は従来は監査役や公認会計士の領分でしたが、かれらは税務や会計の知識は豊富でも、犯罪捜査が専門ではなく、人間心理には疎い場合もあることが弱点でした。公認不正検査士は会計の専門家であると同時に、捜査の専門家としてのノウハウを兼ね備え、効率的に不正を発見する役割を期待されています。
具体的には帳簿の精査だけでなく、関係者への聞き取りや面接、場合によっては尾行調査などを行なって、不正の証拠を集めます。アメリカでは史上最悪とされるワールドコム不正会計事件、ナスダック元会長による巨額詐欺事件、コインゲート事件などの解明に、公認不正検査士が関わったことが知られています。
公認不正検査士は会計・法律・調査・犯罪心理の4分野において、高度な専門知識を要求されます。この称号を得るためには、アメリカにある公認不正検査士協会に加入している必要があります。日本に導入されたのは2005年のことで、現在では年に2回の試験が行なわれています。ただし合格してもすぐに資格が得られるわけではなく、最低2年間の実務経験や3人の推薦状など、さまざまな条件が必要です。実際に受験して資格を取得するのは、公認会計士や弁護士、警察関係者などが多いと言われています。
公認不正検査士は日本の公的資格ではないため、取得したからといってすぐに開業できるわけではありません。しかし民間企業の監査部門や監査法人に就職する際には、高い評価を得られる資格です。証券取引等監視委員会の募集要項でも、公認不正検査士の資格を持っていれば望ましいとしています。
企業の不祥事に対する社会の目が厳しさを増している昨今、不正の早期摘発と再発防止に重要な役割を果たす仕事として、公認不正検査士はますます注目を集めていくと考えられます。