「同一労働同一賃金」とは
同一労働同一賃金とは、簡単に言えば、同じ仕事内容であれば、同じ賃金にするべきだという考え方です。言葉で表せばこう簡単なものなのですが、現実にはそんなに単純な問題ではありません。
分かりやすい例を挙げると、正規雇用と非正規雇用の場合で賃金が異なることが多いと思います。月給に差があり、ボーナスに差があり、さらには福利厚生にも差があります。でも、同じ仕事をしているんだから、どちらも同じ月給、同じボーナスを受け取るべきだという「同一労働同一賃金」の考え方は、主に非正規側やその会社に関係のない第三者から生じるものです。なぜこういう考え方の違いが生じるのでしょうか。
同一労働同一賃金についての考え方の違いが生じる原因は大きく二つあります。
一つは、会社側からみた「正規雇用と非正規雇用の立場の違い」、もう一つは「表面的ではない仕事の内容」です。
まず、正規雇用は将来の会社の幹となる人材を育てるために採用している枠です。要するに、会社にとって重要な人材を正規雇用とするのです。ですから、正規雇用で採用されるのは基本的に大学卒業しており、ある程度学歴のある人が中心となります。なぜなら、会社を動かすためには頭の良さも要求されるためです。だから会社側も厚くもてなして長く務めてくれるような人材にしたいと思うのです。それに対して非正規雇用の場合は、人手不足なので一時的に一緒に働いてもらいたい人材であることの方が多いです。なので会社側もお願いしたこと以上の仕事内容は求めていません。
そして“表面的ではない仕事内容”というのは、例えば工場で同じ仕事をしているように見えても、受けるプレッシャーが全然違います。正規雇用のほうは将来を期待されているため、上司からの指導は厚いのですが、非正規の場合はそうでもありません。もちろん仕事のプレッシャーもありますが、それは正規雇用の比ではありません。また、正規雇用は優先的に残業をしなければいけないし、会社の将来のために休日も家で勉強して教養を身に付ければなりません。
表面的には同じ仕事に見えても、正規と非正規ではこれほどの違いがあるのです。いかに同一労働同一賃金の実現が難しいか、わかるでしょう。