新聞記者の仕事とは
新聞を読めば、世の中で何が起こっているかを知ることができます。継続して読んでいれば、その原因や背景について知ることができるでしょう。小説が創作の世界であるとしたら、新聞は現実社会での出来事を切り取って私たちに提供してくれているものだということができます。そして、そこで働いているのが新聞記者です。
ところで新聞記者の仕事とは、改めて考えてみれば一体どういうものなのでしょうか。例えば事件事故であれば、警察発表をそのまま記事にすればニュースとしての役割は一応果たしていることになります。しかし事件事故の当事者は一人または一つの組織ではなく、複数の当事者や複数の組織がいかにその事象に関わっているかということが問題になります。そこを明らかにするためには、警察発表をそのまま記事にするだけでは新聞記事としての価値は低いといわざるを得ず、読者は満足しません。
世の中は実にたくさんの要因が絡み合って成立しています。どの立場に経つかによって、利害関係すら生まれてきます。そのため問題の背景を整理し、なぜ事件事故が起きたのか、その責任はどこにあるのか、今後そうした問題が起きないようにするにはどうすべきなのか、そうした立脚点で書かれた記事であれば、健全な好奇心を持つ読者を満足させることができます。そして世の中は、そうした小さな事件事故だけではなく、さらに大きく複雑な問題も多数存在します。
新聞は中立であるべきだといわれますが、これは一種の幻想だと思われます。各々の新聞にはそれなりに特徴があり、読者は分かれています。逆に言えば各々の読者のグループと利害を一致するのが各々の新聞だと言えます。そのため同じ対象を取り扱っても、見方が正反対になるのです。この事実は大事なことであり、読者は価値判断を迫られます。
新聞記者の仕事とは、単なる事象の説明を記事にするのではなく、背景や原因・問題点などをも提供し、時にタブーに切り込むことさえ恐れずに、読者に社会を考えさせ、行動を促す素材を提供するのがその使命であるといえるでしょう。